2008年9月30日火曜日

68. 色とりどり

ふたたび、三月の巻 おまけ

 晴天が続くのはいいとしても、スギ花粉も勢いを増すとあっては、喜んではいられない。合鍵効果もあって、櫻とはすっかり仲睦まじく過ごしているものの、今ひとつ冴えない千歳である。今日もマスク着用でのご出勤。午後はマップ講座が控えているが、あいにく実地には出られそうもない。
ふ「私も同行させてもらうわね」
さ「じゃ、千歳さんはお留守番」
ち「おとなしく、KanNaのメンテでもしてます(トホホ)
 講座のスタートは十四時。先月の情報誌に櫻の写真が載ったのが利いたのかどうなのか、いつになく男性客がそこそこ増えているのが引っかかる。男女半々にして、会場はほぼ満席。年齢層のバランスも悪くない。文花は上機嫌である。
 「定刻になりましたが、ゲスト講師の到着が遅れてまして。先に白地図配りますね」
 センターを中心とした周辺地図が厚手の紙に刷ってある。アシスタント的に入っていた蒼葉、そして受付にいた舞恵が配る係を買って出る。清も開講前に来ていたが、今は受付にポツン。千歳はカウンターで待機中。
 「矢ノ倉、ゴメン。あ、皆さん、スミマセン」
 目にも鮮やかなオレンジのドレスコートを身にまとい、その女性は現われた。
 「って、どしたの?その衣装」
 「あ、それはまた、あとで」
 人前に出るってんで、おめかしして来た堀之内先生である。衣装選びに手間取ったとは言え、講師が遅れて来ては示しがつかない。だが、
 「えっと、堀之内と申します。皆さんのお手元に、あ、配られたとこですね。今のところは見ての通り、何色でもないンですが、これがどんな色に変わっていくか、それが今日の見どころです」
 さすがは現役教諭、ツカミを心得ている。男性客に気を良くしたというのも手伝ったようで、その後の挨拶も極めて闊達。遅刻を帳消しにして余りある。たちどころに聴衆を惹き込んでしまった。
 先生にくっついて来たか、引率して来たかはさておき、小梅と六月も姿を見せる。千歳には軽く会釈しただけで、そそくさと会場後方へ。この二人は惹き込まれて云々ではなく、単に恩師の一挙一動が気になって仕方ない、ということのようだ。
 得意の出だしを持って行かれてしまった格好になった櫻だが、講座の趣旨説明というお役目があるので、流れとしてはこれで良かったかも知れない。千歳と一緒に作り込んできたプレゼン資料に沿って、グリーン(またはブルー)マップの意義、これまでのトライアル状況、そして、
 「あくまでご自身で地域を見つめ直していただくための道具みたいなものです。ちょっとした発見が一つでもあれば十分、と思います。今日はひとつお気楽に...」
 心構えが述べられる。だが、少しはヒントというか視点がないことには漠然としてしまうので、
 「で、堀之内先生、そのご衣装、もしかしてテーマカラー?ですよね」
 つまり、安全面や防犯面に着目する場合は、オレンジ。環境面や地誌面ということならグリーン。そんな色分けが設定されていたのである。ゲスト講師として永代をお招きしたのは他でもない。文花お得意の手回しである。
 オレンジはOKなのだが、グリーン関係者がまだお見えになっていない。清が受付に残っているのは、然るべき理由があった。
 「あら、櫻ちゃんの話、終わっちゃった?」
 「何だ、招かれざる客人が来たぜ」
 「アンタ、Come onさんでしょ。来いって言うから来たんじゃない」
 おなじみグリーンのトレンチコート。探偵さんの御成りである。
 「いえね、課長殿とつい長話しちゃって、その... あら、いない?」
 師匠が受付で張っているもんだから恐縮している。辰巳はセンター出入口でコソコソしていたが、緑に見つかり万事休す。清も少々曇り顔である。
 「たく、また縁談でも持ちかけようってか」

 オレンジマップの解説が終わろうとしている時、グリーンの人が入って来たもんだから、参加者は一様に目をパチクリ。オレンジの印象が強かったが、このグリーンも負けず劣らず、である。チーム分けする上で、こんなにやりやすいこともないのだが、見た目の色に引きずられてしまうというのもどうかと思う。ちなみにグリーン担当の櫻は、紺系のスタンドカラーコートを羽織るところ。ブルーとは言い得ないかも知れないが、この色も十分着目に値する。オレンジか、グリーンか、はたまたブルーか... 講座名こそグリーンマップだが、描く人によっては正に色とりどりのマップになり得る。三人の女性の外套色は、そんな多彩かつ多様なマップの側面を実は暗示していたのである。
 蒼葉はブルー、もといグリーンチームへ。清、緑、舞恵も続く。櫻も含め、年長のお姉様方に惹かれる部分もなくはなかったが、彼にもう迷いはない。六月は小梅と同じ、オレンジチームに加わった。
 いつもと違って、引率するのが子ども達ばかりではないため、多少のやりにくさもある。頼りにしていいのかどうかが微妙ではあるが、旧知の若い二人が同行することになったため、今は平常心を保っている永代である。
 コースの確認が済むや否や、早速、引率者の足を引っ張るは別の旧知の一人。
 「前から気になってたんだけど、須崎さんとおひささんて、ただの知り合い? それとも...」
 「やぁね、矢ノ倉ったら。その質問のためについて来たの?」
 辰巳は、何でもない鋪石にいきなり足を取られてしまう。
 「足元注意、と」
 マップにチェックするフリして苦笑い。俄か三角形のような様相になっているが、いい歳してどうこうやるでもない。この際、隠し事はなし、である。
 「まさか、ご両人がそんな間柄だったとはねぇ」
 「小柄な女性はつい長身男性に惹かれちゃうから。若かった、ってことかしらン?」
 「でも、今のダンナさん通して知り合ったんでしょ? 何か順番おかしくない?」
 「ま、世の中、いろんな三角形があるから、ね?」
 今度は正真正銘、歩道に妙な凹みがあって、転倒しかける長身の君。永代は何事もなかったように喚起する。
 「はいはい、皆さん、こういうとこ、要チェックですからね!」
 十数人の一団は、思い思いに印を付け出した。辰巳は半ば呆然としつつも、立ち位置をキープする。目印としては格好の人物。転びかけてもただでは...の図である。

 拉(ひし)げたガードレール、電柱に無造作に括られたステ広告、意味不明な落書き... 街中には負の側面が多々散らばる。だが、しかと目を向ければ好ましい要素も見つかる。注意を促すばかりがオレンジの役割ではない。心温まる色彩でもあるのだ。
 「先生、ここの舗装...」
 「また随分とシブイオレンジ色ねぇ」
 「古タイヤを砕いたのが入ってんだって」
 ちょっとした案内板を見つけると、六月は早速伝達する。
 「それはまたよくできたことで。てことは、足に負担がかからないってか」
 「でも、これって何使って塗装したんだろ?」
 「天然のオレンジじゃないよね」
 クッション性という点で人に優しく、廃材リサイクルという点で環境配慮に適う。だが、塗料は? 有機溶剤を使わないといった対応は可能だが、そこまで万全を尽くすのは難しいだろう。永代は自分のコートの色と見比べながら、ちょっと後ろめたい気分になる。我が教え子ながら、環境感度がこうも高いとやはりやりにくい。

(参考情報→再生材舗装

 小梅は持ち合わせのパステルで、地図上の該当部分を塗装してみるが、どうもピンと来ていない様子。色もしっくり来ないが、この弾力をどう表現したものかと思案していたのである。そんな姉御を見て弟分が動かない筈がない。
 廃材の宿命だろうか。接着不十分なのが都合よく転がっていた。その渋橙の一片を手に取ると、
 「これ、こすりつけてみたら?」
 「そう来たか。ま、あとで貼り付けてもいいかな」
 イラストレーターの地図は、すでに賑やかなことになっていたが、素材をそのまま援用するとなれば立体感が加味されよう。
 「観察、描写、でもってあの発想かぁ。総合の時間にお招きしちゃおっかな」
 小梅が母校の教壇に立つ日はそう遠い話ではなさそうである。

 メモを取ったり、ケータイで撮影したり、他の参加者もそれ相応のことをしているが、目に付くのはセンターオリジナルのアイコンシールを貼る動作。!とか?とかここまで本意でないシールの出番が多かったが、この若い二人のやりとりを見て、スマイルマークを貼る人がチラホラ出てきた。感情表現ツールとしての有用性、ここに在り。永代はちょっと目をこすりつつ、
 「smilefulぅ... て、そんな単語ないか」
 花粉がどうとかではない。単にウルウルしてきただけ...。

 環境課のご所属ゆえ、今は仕事として地域環境をチェックしている辰巳である。高い目線を使うだけでなく、足元にも目を配っていて、実にマメマメしい。氏の注意がそっちに行っているのを確かめると、永代はおもむろに、
 「で、矢ノ倉は? お相手ってどうなったン?」
 旧友ともなればパターンは読めている。文花は軽く、
 「お相手って、何のさ?」
 と往なしてみる。
 「ある人から聞いたわよ。トボけてもムダ」
 「おかしいな。情報錯綜させてたつもりなんだけど、バレちゃった?」
 独特の駆け引きを展開する二人。マップも何もあったものではないが、段差や凹凸にはちゃんと反応している。器用なもんである。
 「せいぜい見習わなくちゃ。街歩きの極意というか危機管理能力というか」
 辰巳の地図は文字で埋まっていたが、察するに余禄というか、はみだしメモの比率が多くなっているようである。

 一方、グリーンの方は想定通り、探偵さんが大活躍していた。花粉が飛んでようが何のその。一見変装用ともとれるそのマスク姿も一興ながら、良いも悪いも何でも題材に仕立ててしまうもんだから、参加者を飽きさせないのである。
 「ようござんすか? 悪さする連中は死角がお好き。言っとくけど三角じゃないわよ。でもってお子さんたちも人目が付かないところが大好き。とここで良からぬ接点ができちゃう」
 脈絡がよくわからないが、ここで取り出したるは虫眼鏡。
 「そこで重要になるのが、地域住民の目。別にこれ使ってジロジロやんなくてもいいけど、皆が視てるってのをふだんから定着させるってことよね」
 佇まいとしては悪くない裏路地に行き着いた。角地の家屋に人気はない。周囲の目が届きにくい好例である。
 「ちょうど目玉のシールがあるわね。じゃこれを...」
 櫻はシール同様に目を見開くと、
 「おば様、それは[すばらしいながめ]ですってば」
 「あら、要監視じゃなくて?」
 シールは使いよう、ではあるのだが、グリーンマップ的にはちと困る。どっちかと言うとオレンジマップ的アプローチ。
 「まぁ、古い民家がお好きな方にとっては、絶景かも知れませんから」
 いつもの機転を利かせる櫻。ひとまずOKということになった。
 アイコンシールの使い方を紹介しつつ、マップ初体験者にガイダンスする櫻。こっちが入門編だとすると、緑は応用編といったところか。
 「おじさんも面白いけど、おば様も愉快ネ。他にもお道具あるんでしょ?」
 「あとはこれ」
 「双眼鏡?」
 「オペラグラス。探偵さんはこれで十分。遠くも近くも、とにかく視点を駆使して観察・監視...」
 「あと、感受もな」
 三カンを唱えるは勿論この人、清である。
 「で、環境の環と」
 「関係の関で」
 「わかった、カンカンカンカンカン♪」
 何せ叩いて鳴らすのがこのお姉さんの領分である。感性にピタっと来たらしく、五カンを見事音にしてみせた。
 「監事さんから聞いてたけど、奥様も面白いこと」

 カンつながりか、カントウタンポポが路傍で見つかる。
 「おたまさん、虫眼鏡」
 「ハイハイ、また道草でございますか」
 清は機に乗じて、在来種探しをしていたが、折りよくいいのを見つけてニヤリ。アスファルトの隙間から生え出るそのタンポポの鑑定を試みる。
 「いやぁ、やっぱ地モノは根性あるわ。間違いない」
 摘んで漬(ひた)して、という選択肢もあったが、ここはそっと見守ることに。櫻は[固有植物]系統のシールを貼り、さらにスマイルを書き足した。
 蒼葉は付かず離れずでキョロキョロ。春の画材を探していただけなのだが、ちょっと挙動が怪しい。
 「ちょいとそこの美人さん、お探し物ですかい?」
 「あ、ルフロン。ねぇ、何かイイ素材ってない?」
 「絵描きさんがそんな。公園とかじゃつまらんてか」
 「住み慣れた町だから、どれ見ても何かインパクトなくてね」
 「インパクト的には、蒼葉ちゃんの動きが一番かも。さっきから目立つ目立つ」
 「干潟同様、自称うろつく女ですから」
 「それじゃ不審者とニアリーじゃん。お巡りさんから尋問されても知らんぞい」
 「魔女さんも十分アヤシイと思うけど」
 話がとりとめなくなっているが、地域においては目と並んで口も物を言う。怪しい人物を見かけたらとにかく声かけするに限る。これも応用編のうち、だろう。緑に言わせると、
 「グリーン防犯とでも呼んでもらいましょうか。ゴミのポイ捨て予防にもつながるかも知れないし」
 おば様はこの通り上々だが、あおば様の方は結局どうだったんだろう?

 「あーぁ、千歳さん大丈夫かな?」
 「やっぱケータイ要るんじゃない? お姉さま」
 「フフ、私の思いは電磁波だか電磁界より強いんだから」
 「そりゃ結構なことで。でも二人で春のお散歩ができないってのはお気の毒ネ」
 センターでは、屋内でもぬかりなくマスクな男が留守番中。花粉の侵入についてもしっかりReduce(予防・抑止)を図っている訳だが、さすがにウワサ云々は防ぎようがない。
 クシャミがこだまするセンター午後四時である。

 地図も行動半径も同じだったが、両チームが接触することはなかった。一時間半に亘る探訪・調査を終えた一行は、帰還時刻になって漸く再会を果たす。
 「皆さん、おつかれ様でした。ではチームごとにふりかえりなどお願いします。あ、先にコピー、取らせてください」
 ひととおりの情報共有が済んだら、成果発表!と行きたいところだが、何せこの人数である。一人一人のオススメスポットなどを披露してもらうには時間が足りない。とりあえず優先すべきは一つのマップに集約すること。言うなれば、オレンジとグリーンの融合である。
 「そっか、くっつけると人にも環境にも、ってなるんだぁ」
 「ねぇ、六月クン、グリーン+オレンジって言えばさ」
 「ハハ、湘南電車かいな」
 「え? 湘南新宿ラインじゃなくて?」
 湘南マップと命名してもよさそうだが、車両と違って色鮮やかな訳ではない。グリーンマップのグリーン=よりどりみどり、と捉えるのが順当だろう。そして両者に共通して言えるのは、あくまでAs-Isレベルである、ということ。
 「現状認識は深めていただけたと思います。本来ならさらに『どうしたらもっと良くなるか』といった理想像のようなものも描いていきたいところなんですが、それはまたの機会に譲ります。今日のところはそうですね。残りの時間でもう一度、全体のおさらいなどを」
 参加者アンケートも配られ始め、お開きの時間が近づく。もっとゆったりと、例えば大白地図に付箋を貼って議論し合うというのがあれば、共有・融合ももっとやりやすかったのではないか... 櫻は違った意味でふりかえりをしている。
 だが、行事主催の責任者はその辺をしっかり見越していた。本日のまとめは、清でも緑でも永代でもない。文花である。
 「地域との関わりに気付く、関わりを築く、その一助になれば、というのが今回の趣旨でございました。この『気付く』と『築く』は、環境教育などで使われる言い回しですが、環境に限ったことではありません。お一人お一人が日常生活の中で認識してもらうだけでいい、もしかするといいことあるかも、ってそんなキーワードだと思います。で、当センターとしてもですね、その『築く』のために、皆さんに描いていただいたマップをとにかくまとめてみようと思ってます。せっかくなのでオレンジとグリーン共通のチェックポイントには、QRコードを付けて、何らかの情報を入手できるように、あとはですね...」
 ホワイトボードに走り書きしながら、現役教諭のような仕切りを見せる。これといったプレゼンツールはないものの、聴衆は釘付け。
 「白地図も各種そろえてダウンロードできるようにしますけど、環境情報センターらしい仕掛けをちょっと」
 これには、櫻も千歳もビックリ。
 「投稿型共同制作マップ?!」
 文花は再びボードにサラサラ。
 「覚えやすいように、ITグリーンマップとしておきましょう。インターネットをお使いの方はぜひこちらで今日の続きなどを」

(参考情報→地図+QRコード

 地元企業など、スポンサー情報と連携させれば起業ネタ。あの兄君、実はこういうのがお得意だった。とりあえずはスポンサー抜きのベータ版だが、基本的な機能は同じ。ログイン後、マップを読み出し、ピンポイントでコメントや画像を入れることができる。
 地域がいきいきするなら、それは流域ベンチャーの望むところでもある。試供品扱いにて無償で暫定リリースしてくれたんだとか。
ち「そっか、本多兄にね」
さ「い、いつの間に?」
 永代が考えていたのとまた違う人物が今は文花の意中。移り気と言えばそれまでだが、両者にとっての実益を考えているところが只ならない。それにしても出会ってから一週間も経たないうちによくもまぁ、である。
 文花の口からは出なかったが、千住姉妹や千歳はちょっとした可能性を見出していた。それは、To-Beモデルにも応用できる?ということ。投稿が増えればそれはそれで盛り上がるが、そこに各自の理想が加われば言うことなし。地域の元気にもつながり得るのではないだろうか。つながりを築く、の深意に今、気付く三人である。
 IT不得意でも大丈夫。気が向いたらセンターへ。特に土曜日はオススメ。そんないつもの思いつき付け足しもあり、会場は納得のムード。千歳はただ「ハハ、さすが」。脱帽、いや脱マスクである。
 予定時刻を過ぎ、十七時半近くになっていた。それでも講座運営についてどうこう言われることはない。回収した参加者アンケートを見る限り、評価は概ね良好。上出来である。

 清、緑、辰巳の因縁トリオは、明るいうちはまだ動くとかで、早々とご退場。蒼葉と舞恵は何となく館内に残って雑談中。他の面々は次の通り。
さ「今日はありがとうございました。またいつでも...」
ひ「卒業式とかあるし、何より二十四日もあることだし、ネ」
ち「お二人も次は二十四日、かな?」
こ「初姉、ヒマそうだからその前に一度連れてきます」
む「じゃオイラも」
ふ「そしたら、弥生お姉さんもね。お願いしたいこともあるし」
 千歳と櫻はドキとしつつも、その真意を探ってみる。三月中ならまだ時間の融通も利くだろうから、接客とか議事とかサポートしてもらえるなら、二人としてもありがたいところ。だが、待てよ、IT絡みというのも大いに有り得る。お互いピピと来た。
 「ねぇ、千歳さん、さっきのITグリーンマップって」
 「ゴミ情報もインプットできるよね」
 「やっぱし、そう思う? でも弥生ちゃんだったら、きっと...」
 「DUOにマッピング機能を搭載して、とか? となると、『どんなゴミがいくつ』だけじゃなくて『いつ、どこで』ってのが加わって、しかも画像付きで出せる可能性が出てくるね」
 「漂着モノログも合流しちゃったりして」 誕生月というのは、否応なく充実が図られるものである。弥生も決して例外ではない。