櫻が千歳宅に来る時は何かひと仕事、というのが定着したようで、ひと休みでは済まなかった。二部構成(現場視察~リセットクリーンアップ)だったこともあり、一人でダラダラと書くのはしんどい。二人で意見を交わしながら記事にした方が、単調にならないし、立体感も出てくる。漂着物の物に引っかけてのモノログだったが、対話の中から書かれたとなると、ダイアログである。ブログタイトルについては、正に「物議」を醸しそうだが、十二月最初の漂着モノログは、かくして二日の夜のうちに更新される。共同執筆による今回の一件は、higata@でも忽ち話題を呼び、それに釣られてか、メンバー個々のやりとりも活発になっていった。
櫻<=>南実、文花<=>業平の二組は、二日の展開からして何となくわかるが、弥生<=>舞恵、業平<=>八広といった音楽つながりの組合せもあって、目が離せない。冬木の情報誌は予定よりも遅れたものの、週明けには間に合い、サイトの方も無事更新。higata@には更新御礼の一文とともに、次号予定として、データ入力画面を紹介する件のお伺いが流れる。一月号と言っても年内には発行手配をかけないといけないため、切迫している。だが、開発者や管理者の方は先行して動いていたので飄々たるもの。ほぼ同じタイミングでポンと返事を打つ。「ケータイ版の新規利用者登録、いつでも受付OK」「PC版、案内画面は八日にセンターでお披露目予定」だそうな。お披露目の際の反応をもとに、入力画面(PC版)の仕様をまた考えて、その翌週にでも弥生に作業してもらおう、というのが千歳マネージャーの手筈である。
KanNaの特設掲示板の方もそこそこ賑やか。現場に湊が現われなかったこともあってか、言いたい放題な向きも認められる。管理人としては悩ましいところだが、どれもごもっともではあるので、特に削除するでもなく静観の構え。「良かれと思って、というのはわかったが、まずは話を聞かなくては」「対症療法の繰り返しは傷を深めるだけ」「本来の姿を考えるための教材だと思えばいい。自然のことは自然に委ねたい」 ここまででも十分と言えるが、さらには「ゴミは来ないに越したことはないが、来るものは拒まずでもある。干潟での回収、大歓迎」という書き込みまで。初日の討議、二日目の視察、プログラムとして一体感を持たせた成果があったと言うべきか。辛辣ではあるが、勇気づけられるメッセージ。それらはそのまま八日の理事候補会合でも取り上げられ、一文書として練られていくことになる。
ご夫人からも報告はあっただろうが、仲介団体からの一筆というのはまた重みがある。河川事務所宛に消波実験に対する見解書が送られたのは、課長から話を聞く会の十日後のこと。課題解決アプローチとしては適度な速さと言えよう。
設立準備中ながら、法人としての形が整いつつあるのは事実。それは一つの強みになる。そして、役員連名でこうした書面が出せた、ということが何よりも励みになる。ちょっとした事件があると、時に地域力・現場力が高まる、という話を一部の面子は聞いていたが、それを図らずも実感できたという訳である。回答書の内容によりけりではあるが、石島課長にはひとまず感謝しないといけないかも知れない。
七人全員が揃った八日の会合では、この他に、
- 設立総会の詳細、開会までの工程決め
- 総会までの間の仮入会の促進(総会後に会員として移行してもらうためのルール決め)
- 総会議案、特に定款案の早期決定
- 部会行事をどうするか(有力案は、一月のゴミ減らし協議を皮切りに三月まで三回、部会設定を模索しながらお試し講座を開くというもの)
- 公募中の法人名称案の中間発表を受けて(決定は一月の講座終了時を予定)
盛り上がるのはいいとして、その分、議事録をまとめるのは大変になる。議題ごとにメインとサブを交代しながらPC速記をしていた千歳と櫻だったが、さすがにヘトヘト。議長の文花もマーカー片手に青息吐息。速記官を置くか、センター休館日に行うか、何らかの工夫が今後は必要になりそうだ。
センターの関係各位にとっては、前半の方があわただしい師走となった。歳末にかけてドタバタするのが世間だとすると、こっちはその逆。後半はむしろスローダウンとなる。今日はその境目となる第三土曜日だが、早くもそのスロー加減を象徴するような事態に。お留守番の二人の会話もこうなる。
「じゃ、矢ノ倉さん、今日はビッグサイトに直行ってこと?」
「業平さんにいろいろと教えてもらいながら見学するんだそうで」
「土曜日の『エコプロダクツ』って、それなりに人出があるだろうからなぁ。お目当ての展示を見て回れるかどうか」
「文花さんの狙いは、ちょっと違うと思うな。教えてもらうってのは口実よ。デートしたいだけじゃない?」
マスクをしてない文花さんのこと。きっとクシャミに苛(さいな)まれてることだろう。
議事録署名人の玉野井のおば様、代表理事候補の掃部のおじ様のチェックを経て、議事録がようやくまとまったのはこの日の夕方。元気印の文花が帰って来た。
「どうでした?エコプロ」
「えぇ、楽しかったわよ。ハイ、お土産!」
「楽しくて当然。デートだもん」
「あくまで環境市場調査でございます。誰かさんの七夕デートとは違うんだから」
なんて言いながらも、大きめのマイバッグから愉快そうに収集品を取り出す文花。カレンダー、エコバッグ、各種ノベルティ文具、ケータイストラップ、その他試供品の数々。
ふ「どれでもお好きなのどうぞ。って言っても、お二人さんの場合はどれも共有か」
ち「あれ? これって生分解性?」
ふ「あぁ、そのゴミ袋ね、バイオマスマーク付きのサンプル。そんでもってこっちの手提げ袋はバイオプラマーク付き。農林水産系と経済産業系でそれぞれ協会があって、似たようなものなんだけどマークが異なる、つまりタテ割りね」
さ「どっちにしてもこれが普及すれば環境負荷は減る?」
ふ「消費者にとってはわかりにくいけど、結果オーライかしら。でも、一緒に取り組むことが何よりの負荷削減じゃない?」
(参考情報→「エコプロダクツ2007」と2つのバイオ某)
ただのデートではなかったことは、集めてきた資料の量からもよくわかった。商品パンフレットの一例で言うなら、
さ「それにしても、バイオマスCDにバイオマスシューズって。DVDとか運動靴が漂着するくらいだから、これってアリかも知れないけど、新商品開発競争に歯止めをかける方が先のような...」
ち「これは? 水溶性ファスナー? 溶かせば済むってか」
ふ「まぁまぁ。私としては、この簡易式の緑化システムがイチ押しね。野菜用のキットもあるみたいだし。センターで地場野菜、どう?」
来月の講座ネタとしても使えそうな最新の情報が今ここにある。商品の開発競争の見本のような観もなくはないが、ゴミを抑制するための解決策も少なからず含まれている筈。情報源人物、矢ノ倉文花の本分を見た思いの二人は、改めて敬意を表することにした。
ち「おそれいりました。事務局長殿」
さ「デートしながらもここまで抜かりなく、とは」
ふ「だから、デートじゃなくて...」
さ「はいはい、調査でしょ。二人の距離の」
ふ「もおっ! カレンダー没収!」
さ「それは彼の、カレンダー♪」
千歳が止めない限り、ずっと続きそうなこの漫談。観客としてはさらにけしかけたいところだが、あいにくお開き、いや閉館の時間になってしまった。外は真っ暗。来週まで、つまり冬至まではただひたすら日没が早まっていく。 日脚が反転するのが待ち遠しい。だが、待ち遠しいのはその翌日のメンバー集合会か? いやいや、さらにその翌日が本命だろう。三者三様なれど、想うところは同じ。素適な聖夜が待っている。
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